マンションリフォームにかかる費用と助成金について
家族構成や生活スタイルの変化はしばしば、住宅の機能やレイアウトに合わなくなる要因となります。子供の成長に伴い部屋の使い方が変わることや、在宅勤務の増加によりホームオフィスが必要になるなど、生活の変化に応じたリフォームが求められることがあります。
このようなリフォームは、住居の快適性を向上させる重要な手段の一つです。
特にマンションの場合は、リフォームは専有部分に限られ、共用部分との区分も明確に理解する必要があります。また、多くのマンションでは管理規約にリフォーム時の規定が設けられており、これらの制約を把握することが不可欠です。
今回の記事では、リフォームを検討する際の費用面を含め、これらのポイントについて詳しく解説します。
マンションリフォームにかかる費用
3LDKのマンション専有部を完全にリフォームする場合、一般的に約400万円から800万円の費用がかかると言われています。
デザインにこだわったキッチンや高品質な内装材を使用すると、費用が約1,000万円に達することもあります。
水回りのリフォーム費用の相場
水回りのリフォーム費用の相場は、次のとおりです。
- システムキッチン:約50万円~200万円
- ユニットバス:約60万円~150万円
- トイレ:約4万円〜60万円
- 洗面化粧台:約10万円〜50万円
内装のリフォーム費用の相場
内装のリフォーム費用の相場は、次のとおりです。
(例)8畳の部屋のリフォーム相場
- 床(フローリング)約20万円~40万円
- 床(クッションフロア) 約6万円~8万円
- 張替え工賃 約5万円~8万円
- 廃材処分費 約1万円~2万円
間取りのリフォーム費用の相場
間取りのリフォーム費用の相場は、次のとおりです。
- 間仕切り壁の撤去 約15万円~20万円
- 間仕切りの設置 約13~15万円(※コンセントや照明、エアコン、扉を増設する場合は、35~42万円が相場です。)
※この相場のデータは、インターネットに公開されている情報を基にして算出した傾向値です。
マンションをリフォームするときに気をつけること
専有部と共用部について理解しておく
専有部分は、所有者が個別にリフォーム可能なエリアであり、その構造や利用が独立している部分を指します。一方、共用部分は全ての住民が利用するエリアで、個々の所有者が勝手に改変することは許されません。
たとえば、マンションの「玄関扉」「窓ガラス」「バルコニー」は共用部に分類されます。これらのエリアは、個々の所有者が自由にリフォームできません。例えば、セキュリティを向上させるために玄関扉をダブルロックにするリフォームは、管理組合の許可なしには行えないとされています。
また、窓ガラスや玄関扉の改修は防犯性や断熱性の向上に直結しますが、これらは共用部であるため、改修は管理規約に従い管理組合が行う必要があります。
したがって、マンションをリフォームする際は、まずは自由に改修できる専有部分がどこにあるかを把握することが重要です。
水回りの配置変更の制約
マンションにおいては、パイプスペースと呼ばれる排水の縦管が設置されており、キッチン、バスルーム、トイレなどの水回りはこの排水管を通じてパイプスペースに接続されています。
排水の流れをスムーズにするためには、適切な勾配が必要であり、マンションの水回りの位置は新築時に最も効率的な排水が行えるように設計されています。
リフォーム時にこれらの位置を変更しようとすると、排水管の勾配が確保できなくなるリスクがあり、最悪の場合、排水管が詰まる原因となることがあります。
そのため、マンションではパイプスペースの位置が固定されているために、水回りの位置の変更が困難であることが一般的です。
マンションのリフォームには制約がある
マンションのリフォームは、管理規約や細則によって使用できる建材に制限が設けられているのが通常です。
たとえば、音が下階に伝わりやすい床材の使用が制限されることがあります。また、虫が寄りつきやすい珪藻土などの自然素材の使用が禁止されている場合もあります。
このように、マンションでのリフォームには使用できる材料に制限があるため、工事を行う前には必ず管理組合の承認を得る必要があります。
管理組合の承認を得るプロセスには、設計図、仕様書、工程表の提出が一般的です。
承認手続きや必要書類の詳細については、事前に管理組合に問い合わせると良いでしょう。
工事中の近隣への配慮
リフォーム工事中には騒音や振動が伴うため、隣接する上下階や左右の住戸への配慮が求められます。工事開始前には、近隣住戸を訪れて挨拶をし、工程表を提供することが望ましい対応です。
特に下階の住戸に対しては十分に配慮する必要があります。
このような状況に備えて、近隣住戸には工事責任者の連絡先を伝えておくことも重要です。これにより、万が一の事態が発生した際に迅速に対応できます。
マンションのリフォームで使える補助金や助成金をご紹介
日本国政府は、マンションリフォームを含む住宅の質向上を目指し、長期優良住宅化リフォーム推進事業、断熱リフォーム支援事業、次世代省エネ建材支援事業、こどもエコすまい支援事業といった複数の助成金制度を提供しています。
これらの助成金は、耐震性の向上や省エネ対策、少子化対策を盛り込んだリフォームに対して適用可能です。国の環境や安全に関する施策に合致するリフォームを行うことで、これらの助成金を利用することができます。
長期優良住宅化リフォーム推進事業
長期優良住宅化リフォーム推進事業では、マンションを含む住宅のリフォームに対して、工事後の性能向上を条件に補助金が提供されます。
補助対象となる費用
住宅の性能向上リフォーム工事費などが補助対象となります。そのほか複数世帯が同居しやすい住宅とするためのリフォーム工事費(三世代同居対応改修工事費)や子育てしやすい環境整備のためのリフォーム工事費(子育て世帯向け改修工事費)、インスペクション
等の費用も補助対象になります。
補助対象となる工事
性能向上リフォーム工事
三世代同居対応改修工事
子育て世帯向け改修工事
防災性の向上・レジリエンス性の向上改修工事
補助額
以下の 1)と2)の合計
1)リフォーム工事に係る補助額
a.特定性能向上リフォーム工事
b.その他性能向上リフォーム工事
c.三世代同居対応改修工事
d.子育て世帯向け改修工事
e.防災性の向上、レジリエンス性の向上改修工事
2)インスペクション等に係る補助額
① リフォーム工事に先立って行う既存住宅のインスペクションに要する費用
② リフォーム工事の履歴情報の作成に要する費用
③ 維持保全計画の作成に要する費用
④ リフォーム瑕疵保険の保険料
補助金は、工事費の最大3分の1が対象で、原則として上限は100万円/戸です。
既存住宅の断熱リフォーム支援事業による助成金
既存住宅の断熱リフォーム支援事業とは、特定の断熱工事を行うことで補助金を受けられる制度です。この事業は、全国の既存住宅が対象で、公益財団法人北海道環境財団が実施しています。
補助金の対象となるのは、断熱材、窓、ガラスを使用した断熱改修が主です。これには全体的な家の断熱改修(トータル断熱)と、居間を中心とした断熱改修(居間だけ断熱)の二つのカテゴリがあります。
マンションの場合の補助金は、補助対象経費の3分の1(補助限度額は原則15万円/戸)までとなります。
補助金は、公益財団法人北海道環境財団によって公表された補助対象製品の購入にのみ適用されます。これに指定されていない製品での断熱リフォームでは、補助金は提供されません。この制度は、特定の基準を満たす製品の使用を促進し、断熱効果とエネルギー効率の向上を目指すために設計されています。
詳細な製品リストや補助金の具体的な情報については、以下のリンクから確認することができます。
補助対象製品一覧|既存住宅における断熱リフォーム事業|公益財団法人北海道環境財団(環境省補助金専用サイト)
補助金を受けるプロセスでは、公募期間内に交付申請を提出し、審査後に交付が決定されれば、リフォーム契約を結んで工事に着手します。工事完了後、必要書類を再提出して審査を受け、交付額が確定すると補助金が支給されます。
北海道環境財団のウェブサイトで公募情報が定期的に更新されますので、申請前に情報を確認しておくと良いでしょう。
介護保険による住宅改修の補助金制度
介護のためのリフォーム工事は、介護保険によって補助金が受けられます。
対象
この補助金は、高齢者や障害を持つ人々が自宅で安全に生活できるようにするためのバリアフリーリフォームに適用されます。
主に、スロープの設置、手すりの設置、床の段差解消、トイレや浴室の改修などが対象となります。
支給限度基準額
住宅改修に関する補助金の支給限度額は20万円までです。この枠内で費用が発生した場合、利用者の自己負担割合に応じて保険から給付が行われます。例えば、負担割合が1割の人は、20万円のうち18万円が給付され、2万円が自己負担となります。負担割合は利用者の所得により1割から3割と変動します。また、20万円を超える部分については全額自己負担が必要です。
申請方法
住宅改修について、まずケアマネジャー等に相談することが一般的です。利用者は、住宅改修の支給申請書類の一部を保険者へ提出、保険者は提出された書類等により、保険給付として適当な改修かどうか確認します。
工事が完了し、保険者による確認が行われた後、補助金は利用者に支給されます。
出典:介護保険における住宅改修|厚生労働省
次世代省エネ建材支援事業による助成金
次世代省エネ建材の実証支援事業は、省エネ効果の高い新しい建材を使ったリフォームや新築に対して補助金を提供するプログラムです。
令和6年度の公募期間は、現時点では未公表の状況です。
まとめ
補助金制度を上手に活用することで、費用を抑えつつ必要な改修を行うことができます。
マンションのリフォームを検討している方は、マンション特有の注意点を理解し、計画的に進めるとよいでしょう。